言葉の意外性
「あ? 里中?」
花村の声が聞こえてきたのは、誰もいない放課後の教室からだった。
なんだろうとのぞいたら、そこには案の定花村と、知らない女の子が一人。
それがなんでもない世間話だったら乗り込んでいったけど、あたしの事を聞かれているのかと思ったら足が止まった。
別に、立ち聞きなんてするつもりなんてなかったよ!
でもさ、この雰囲気ってきっとアレだと思うんだよね。
つまり、『告白』。
だから、教室に入りにくかった。
でも、明日提出の課題のプリント、置いてきちゃったんだもん。このまま立ち去る事はできなかった。
それにしても、この状況の中であたしの話題ってなんなんだろ?
「なんで里中が出てくんの?」
お。花村もおんなじこと思ってる。
「だ、だって、いつも一緒にいるし、仲がいいから・・・」
「は? ・・・え? それって俺と里中が付き合ってると思ってんの?」
は?
なんでそんなんになんの?
仲がいいって言ったら雪子だっているじゃん。
なんであたしになんの?
っていうか、なんであたし、こんなにドキドキしてんの!?
「あー・・・あいつはそんなんじゃないから」
「じゃぁ、どう思っているんですか?」
えええっ!
っていうか、ほんと勘弁してよ!
「あー・・・」
花村も! なに言葉詰まってんのよ!
はっきりなんでもないって言いなさいよね!
っていうか、肉女とか言ったら後でボコボコにしてやるけどね!
「・・・あいつは・・・欠かせないっていうか。・・・まぁ、大事なヤツ、だよな」
「!」
な、なにそれっ!
カッと頬が熱くなったのが分かった。
だってそんな!
いや、戦力的にって事なんだろうけど! それでも! その言い方ってまずいでしょうが!
「・・・それって、好きって事ですか?」
ほらほらほらほらっ! 誤解されちゃったじゃん!
「あー・・・」
あ、また! なんでそこで口ごもるの?
あああ。
またドキドキしてきた。
あたしたちは悪友みたいなもんでそんなんじゃないって思っていたのに。
「・・・うん。そうゆうこと、かな」
花村の言葉はこれ以上にないほど意外性に富んでいて、あたしに再生不能のダメージを与えた。
配布元:Abandon
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