やる気持続
頭と肩が重い。
眼球の奥の辺りも少しずきずきと痛みが走る。
「疲れているのかな?」
うーんと首を回し、腕を回して凝りをほぐす。
集中しすぎて分からなかったが、どうやらすでに9時を回っているようだった。
「あー・・・もう2時間経っているのか」
手元には折り鶴の山。
商店街の掲示板で見つけたボランティアのアルバイトは、思いのほか夢中になってしまうものだった。
もう少し今日の分を進めておきたくて、疲れた身体を癒すために一息入れようと手を止める。
「菜々子はもう寝たかな」
時間も遅い。寝たかもしれないと思いつつ、俺は階下に降りた。
「あ。お兄ちゃん」
「菜々子、起きていたのか」
「うん」
「もう遅い時間だよ」
「うん・・・」
どうしたのだろう?
菜々子は暗い声で頷いて口を噤んでしまった。
「どうした?」
いつもの場所に座って問いかける。
菜々子は立ち上がって俺の隣まで来ると寄り添うように座った。
「お兄ちゃんとお話、したかったの。でも、お兄ちゃんぜんぜんおりてこないんだもん」
少し拗ねたようにこちらを見る。
「ごめんな」
「うん。今は一緒にいられるからいいや」
えへへ。と笑った顔が可愛くて俺もつられるように笑った。
「お兄ちゃん。ななこ、もう少しおきててもいい?」
可愛いおねだりに思わず頷く。
「じゃ、一緒に鶴を折ろうか?」
菜々子となら、もっと頑張れるような気がする。
「ツル?」
「うん。折り紙で折る鶴。折れる?」
「うん! ななこできるよ! ようちえんでならった!」
「よし! じゃあ、今折り紙持ってくるからね」
「うん!」
元気な声に俺はまた笑った。
菜々子の『元気』と『優しさ』が鶴を送られた人を元気にしてくれたらいいと思いながら、俺は少しの時間の間、この小さな従妹と一緒に鶴を折り続けた。
配布元:Abandon
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