愛されているという事
高められたカラダが疼く。
早く。早くと思うのに、彼の気配は遠い。
荒い呼吸を繰り返しながら直斗はうっすらと目を開いた。
どこにいるのだろうかと周囲を見れば樹はこちらに背を向けていた。
「か、んなぎ、さん?」
呼びかけると、彼は直斗と同じように荒く呼吸をしながら振り返った。
「ごめん」
そうして再び直斗に覆いかぶさると互いの唇を重ねる。
すぐさま深いものに変わって直斗は夢中になった。
ひとしきり絡めあって離れると、熱の篭った瞳で見つめられる。
「・・・入れるよ」
「は・・・い・・・・・・」
それこそ自分が望んだものだけれど、それを言えるほど勇気もなくただ頷く。
足を抱えあげられ羞恥心に目をきつく瞑った。
内側に入り込んでくる熱い塊。
それが彼であると思うと、心がこれ以上なく高揚する。
「あ・・・あ・・・っ」
小さく喘ぎながら、先ほど背を向けていたのはもしかしてアレをつけていたのだろうかと思い至った。
思い出してみれば彼はいつも抱き合う時にきちんと避妊をしてくれている。
心と体が高まれば、どうしたってすぐに欲しくなるのに。
今までは余裕がなくて気がつかなかったけれど、きっとああして準備してくれていたのだろう。
ああ。でも。と直斗は揺さぶられながら思う。
この人の子供なら欲しいかもしれない。
「え?」
すべてが終わった後、彼の腕の中でけだるい身体を休めていた時、つい声に出ていたらしい。
ひどく驚いた表情でこちらを見ている樹を見て直斗は小さく笑った。
「たとえばの、話です」
そう。たとえばの話。
たとえばもし、妊娠してしまったらどう思うのか。
とても嬉しい。そう思えると確信する自分がいる。
でも、実際にできてしまったらきっと困る。
まだ子供で、経済力もない。
できたから。欲しいから。
ただそれだけの理由だけで産んでよいものではない。
人一人の人生を背負う事は、きっとそんなに簡単な事ではないから。
樹はそのことをきっと分かっている。
責任は両方にあるけれど、育み産むのは女の方だから。
だからこそ、樹がちゃんと避妊をしてくれることが嬉しいと思う。
自身ではなく直斗の事を優先し考えてくれる優しい人。
愛されているんだと、思える。
「・・・直斗」
彼の肩口に頬を摺り寄せた。
そんな直斗の髪に口づけて、樹が笑った。
「俺も、直斗との子供なら欲しいと思うよ」
「・・・神凪さん」
「でも、それはもうちょっと先ね」
ぎゅっと抱きしめられて、好きだと思う気持ちが溢れそうになる。
「いつか・・・」
「はい・・・」
涙が滲んだ目じりに唇が触れた。
いつか本当に彼と一緒に、彼の子供を育める時が来ることを願いながら直斗は目を閉じる。
その日の夜に見た夢は、今よりももっと大人びた樹と直斗と幼い子供が一人。満面の笑みでじゃれ合っている、そんな幸せな夢なのだった。
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セックスは愛情の確認のためだけの行為じゃないのよって話。
直斗が子供を産んでもいいと思えるってすごい事だと思います。
妊娠と出産ってまさに『女』にしかできない事だし、それをしてもいいと思えるようになるくらい主人公の事が好きなんだといいなー。
作中で主人公が驚いているのは直斗の口からそんな言葉が出るなんてと純粋に驚いているだけで、子供ができたら困ると思っている訳ではないです。
いつか結婚する気満々ですからね、うちの主人公は!(笑)
それから、たぶんいないとは思うのですが、全体を読んでも『アレ』がなんなのか分からなかったお嬢さんはいますか?
わ、わかるよね? ね?
避妊だけじゃなく性病予防にもなるからエッチの時は忘れずにね!(笑)