手加減してください。
深い金の瞳がじっとぼくを見つめる。
どきどきと胸が次第に高鳴って、頬が自分の意思に反して熱くなっていくのわかった。
落ち着かなくなって、その視線を受け止めきれなくなって、きょろきょろと視線を外す。
そんなぼくの様子にクスリと笑ったのを感じて再び視線を上げたが、やはり金色の瞳を見つめ返すことができなくて少しだけ俯いた。
軍神や英雄とまで呼ばれたぼくだけど、こんな状況に慣れていなくて戸惑うばかりだ。
今までだって彼と視線を交わすことは何度もあったのに。
「・・・ゲオルグ」
心臓がこれ以上ないくらい早く動いている。
息苦しくて、気を失いそうで・・・。
「・・・ゲオルグっ」
耐え切れなくて、掠れそうな声で名を呼べば、
「なんだ?」
なんて何でもないことのように尋ねてくる。
こっちがいっぱいいっぱいになっているのを分かっているくせに知らない振りをするなんて卑怯だ。
「もう、こっちを見ないで」
「なぜだ?」
「な、なぜって・・・っ」
こっちの反応を明らかに楽しんでいるんでしょう!
言ってやりたいのに言葉が出ない。
実を言うと、ぼくは出会った頃からゲオルグの瞳が苦手だった。
あの目で見つめられるとすべてを見透かされそうで、すべてを奪われそうで怖かったのだ。
あの時はまだ右の目で見つめられるだけだったけど、すべてを終え眼帯を取った彼は両目でぼくを見つめた。
本当に、心臓を鷲掴みされいるような気分になる。
性質の悪いことに、本人はそれを分かっていてこうして時折ぼくを見つめるのだ。
「ファルーシュ」
頬を撫でられる。
こちらを見ろと促される。
ああ、もう、本当、
「手加減して下さい」
ぼくは泣きそうな気分で彼の厚い胸に顔を伏せた。
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