這う舌先の感触が。










「あ・・・」

 ぬるり、と彼の舌先が胸の頂を舐めるとそのまま口に含まされた。
 転がすように動かされればあっという間にそこは芯を持って立ち上がる。
 唾液を絡めて、わざとらしく音を立てながら執拗に弄られた。

 ぴりぴりと背筋を走る快感に悶えながら、ぼくははしたなくはぁはぁと喘いで、彼の真っ黒な髪の毛をくしゃくしゃにかき混ぜてしまう。

 そうして感じている事を知らせれば彼は嬉しそうに笑う。
 獣のような金の瞳を満足そうに細めて、もっと乱れろとばかりに激しくされる。

 彼の手が、唇が、熱い舌が、ぼくの身体を余すところなく辿って、もう触れてないところなんてないんじゃないかな。

 ぼんやりと霞む視界の中で、歯を食いしばりながらぼくの中に入ったり出たりしているゲオルグを見つめた。
 いつもすました顔で静観しているこの人が、必死になってぼくを求めている。

 こんな関係になってすぐは、もしかしたらぼくの我が儘に仕方なく付き合っているんだと思っていた。
 こんな面倒くさい事ばかりの十五も年が離れたぼくを、本気で愛してくれるはずはない。そう思っていた。

 だってそうでしょう?
 王位継承権はないとはいえ、ファレナ女王家の王族で、親友の息子で。父と子と言っても大げさじゃないくらいの年の差があって、どうして本気で恋人にしてもいいと思えるの。
 ぼくがゲオルグを好きだから、恋人にしてほしいとみっともないくらい必死になってお願いしたから、抱いてくれたのかもしれないって。

 でも、今はそんな事思ってない。
 逆に考えてみれば、こんな面倒な子供に手を出す方が面倒でしょ。
 王族で親友の子供で年の離れた男を恋人にする、そんな面倒な事をこの男が引き受ける訳がない。

「・・・ゲオルグ」
 両手を首に絡めて、キスを強請ると最初から激しく貪られた。
 息をすることもままならないくらい、夢中で舌を絡めあう。

 それに、中途半端な慰めでこんな風に情熱的なキスをしてくれるはずがない。

「ファルーシュ」
「な、に?」
「いい加減集中しないか?」

 ぐいっと押し込まれて、ぼくは悲鳴を上げて仰け反る。

「一人でしている気分だぞ」
「ご・・・めん」
 ぎゅっと彼に抱きついて耳元にキスをした。
「こんな時に、何を考えていたんだ?」
 少し拗ねた声音にぼくは小さく笑う。
 笑うなと諌められてもう一度「ごめん」と謝って、今度はその唇に口付けて。

「貴方の事を考えていたよ。ゲオルグ・・・」

 精一杯の甘い声で囁いた。








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