ちょっとした得意技に惚れ。
がつがつと。
本当にがつがつと勢いよく口の中に消えていくそれ。
ゲオルグが持つと小さく見えるけど、一応立派なワンホールのチーズケーキ。
ためらいなく次から次へと手にとっては消化されていくのを見るのはもう何度目か。
そのたんびに驚かされているような気がする。
ああ。口の端に欠片が・・・。
思わず手を伸ばしてそれを取ってそのまま口に含む。
うん。おいしい。
なんて思っていると、ゲオルグが食べる手を止めてこちらを見ていた。
「なに?」
「・・・いや」
再びがつがつ。
本当によく食べるなぁ。
気持ち悪くなったりしないのだろうか?
「なんだ?」
ぼくの視線に気がついたらしい、いや、元から気がついていたのだろうけど、さすがに居心地が悪くなったのかゲオルグが問いかけてくる。
「おいしい?」
「ああ。うまい」
「そっか」
「・・・食うか?」
「ううん。ゲオルグが全部食べて? そのために買ってきたんだし」
「・・・そうか」
なぜか少しそっぽを向いてしまった。
「たくさん食べてね。ぼくはゲオルグが美味しそうにチーズケーキを食べているのを見るのが好きなんだ」
「・・・っ」
重ねて言えば、なぜかゲオルグはテーブルに顔を伏せてしまう。
「・・・ゲオルグ?」
どうしたの?
問えば、
「お前のその笑顔は凶器だな」
「え?」
「いや。・・・俺もお前がうまいものを食べて笑っているのを見るのが好きだぞ」
「!」
ぎゅっと心臓を鷲掴みにされた気がした。
その笑顔、反則だよ!
もう本当、そうやってちょっと笑うだけでぼくの心を乱すの得意だよね。
でも、その笑顔に惚れ直してしまうぼくがいる。
「ゲオルグ・・・ぼくにもチーズケーキちょうだい?」
「ああ。たくさん食べろ」
そうして貰ったケーキを食べたぼくは、そのとろけるような美味しさに口をほころばせた。
「美味しい・・・」
様子を伺うゲオルグを見て言えば、彼は満足そうにけれど先ほどとは違った熱の込められた目で見つめられる。
あ、もしかしてゲオルグもぼくに惚れ直してくれた?
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